みなさまの参考になりそうな書籍を担当者がピックアップして、毎月お届けするコーナーです。当センターにお寄りになったら、ぜひ手に取ってご覧ください。

担当者の都合により遅れていて、今回は3月分です。

『思いがけず利他』
中島岳志 著、ミシマ社、2021。

<本書の帯から>
 It’s automatic!?
 誰かのためになる瞬間は、
 いつも偶然に、未来からやって来る。

<担当者から>
著者の中島岳志(なかじま たけし)先生は、東京工業大学のリベラルアーツ研究教育院の教授で、政治思想に関する著書でも有名なかたです。

みなさんが行なう市民活動も、「利他」(他の人を思いやる心)の精神から行なうものが多いと思いますが、本書はその「利他」について、著者の分析や主張が書かれたものです。

「利他」は一般的に好ましいものと考えられますが、利己主義が混じった「利他」(自分に利益が返ってくることを期待すること)はありますし、「利他」には暴力性(相手に強制的に受け取らせたり、受け取った側にある種の負債感を感じさせること)があることも、理解できるところです。

「利他」は「自分の意思で実施する行為」と思われていますが、著者は「利他」の重要な本質として、「思いがけなさ」「やってくるもの」だという指摘をしています。

落語の「文七元結」における長兵衛の行為の分析や、「人間の業(カルマ)」との関係、親鸞の悪人正機説、ヒンディー語の与格構文、民芸との関係や、「利他」は受け取る人によって「利他的行為」となる話、「利他」行為とそれを受け取る時点で時間差があることなど、
興味深いエピソードが多数あげられ、考察がされています。

個人的には、「へえ、こんな考え方もあるんだ」と、多くの視点や考え方を知ることができたと思います。読んでいて楽しい本です。

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