だいぶ遅れてしまいましたが、「今月の一冊」のコーナーです。
みなさまの参考になりそうな書籍を担当者がピックアップして、毎月お届けします。当センターにお寄りになったら、ぜひ手に取ってご覧ください。

『老いる家 崩れる街~住宅過剰社会の末路』
野澤 千絵 著、講談社現代新書、2016。

<本書の帯から>
現在約800万戸の空き家が
15年後には 2100万戸を超える……
3戸に1戸が空き家に!

<担当者から>
近年、「空き家」が増えていると言われています。相続の場面でも、「親の家・土地はいらない」ということで、引き取り手がいないといった場面も増えています。

不動産の財産価値は上がっているどころか、「負動産」と言われる始末です。人口減少も言われ始めて久しく、空き家が増えるのはやむをえないのかもしれません。

ところが一方で、新築の家は今も増え続けています。土地も新たに取得してそこに新築することが多い状況が続いていて、人口が減っているのに「まち」エリアは広がり続け、一方で、古くなった住宅エリアは、空き家だらけになっていきます。水道や電気、ガス、道路等の公共インフラの整備費用、保守費用はどんどん上がっていきます。

著者は、近年の日本が「住宅過剰社会」であると言っており、本書でその実態を数字を用いて次々に明らかにしていきます。正直なところ、非常に怖い現実、怖い未来像です。

著者は、最後の章(第4章)で、処方を示していますが、現実問題として、根本的な対策は難しそうな気がします。実際、本書は、2016年に発刊されていますが、その後、社会の流れが大きく変わったという話はききません。

著者は第4章で、第一の方策として、「自分たちのまちへの無関心・無意識をやめる」ことを挙げています。

そして、自分たちの住宅やまちでの暮らしが、長期的に見て大幅に悪化しないで成り立っていくこと、将来の世代に負の遺産を押し付けてしまわないこと、まちや住まいの維持管理にかかわる義務があることを意識し、声を上げていくことが大事だと述べています。

まさにそのとおりだと思います。

より持続可能な社会にするために、みなさんも意識をもち、声を上げていきませんか。