みなさまの参考になりそうな書籍を担当者がピックアップして、毎月お届けするコーナーです。当センターにお寄りになったら、ぜひ手に取ってご覧ください。
今回もまだ少しだけ遅れています。(汗)

『銀河鉄道の夜』
宮沢 賢治、1934。

ハルキ文庫、角川春樹事務所、2011
青空文庫『銀河鉄道の夜』(最終校正 2010年11月1日)

(本が壁際に立てかけてある写真)

<担当者から>
今回は担当者の趣味により、市民活動とは直接関係なさそうにみえる、宮沢賢治の童話をとりあげてみました。

担当者は、主人公とその友だちの名前(ジョバンニ、カムパネルラ)に聞き覚えがありました。
有名な宮沢賢治の代表作ですので、おそらくどこかで聞いたのか、ひょっとすると子どものころに読んだのかもしれません。

しかし、子どものころに読んだとしても、おそらく何が書かれているのか、全然理解できなかっただろうと思います(今もよく分かっているとは言い難いですが)。
個人的に「よく分からないものがおもしろい」という感覚もあって、今回、楽しく読めました。

『銀河鉄道の夜』は、主人公の孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語です。

銀河鉄道は、天の川沿いに走っていて、途中、様々な星座にある「駅」に順に停まっていきます。
鉄道のモデルは「花巻電鉄」または「岩手軽便鉄道」と言われているようです。

作品で描かれる道中風景の描写は、とてもカラフルで幻想的。
夢の中の星空を旅しているようで、実写版の映画やドラマを作るとしたら、どのように表現するのだろうかと想像が膨らみます。

ジョバンニとカムパネルラは、道中でいろいろな人に出会い、様々な会話を交わし、そしてその人たちは途中で列車を降りて(別れて)いきます。
登場する人物の描写や、主人公の心情の描写も具体的で繊細です。

彼(彼女)らが列車を降りるのは、その駅が天上界(の1つ)であり、彼(彼女)らが現世では亡くなっているから、という設定のようです。
また、列車の旅は、人生の暗喩なのだろうと思います。

本作の最後のほうで、主人公のジョバンニがいうセリフ(のいくつか)が印象的でした(少しだけネタバレかも)。

「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、
どこまでもどこまでもいっしょに行こう。
僕はもう、あのさそりのように、ほんとうにみんなの幸いのためならば
僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」
「けれどもほんとうのさいわいはいったいなんだろう」
「ああマジェランの星雲だ。
さあもうきっと僕は僕のために、僕のお母さんのために、
カムパネルラのために、みんなのために、
ほんとうのほんとうの幸福をさがすぞ」

見解は人により異なるでしょうが、私はこれを「利他」精神のあらわれだと感じ、人が生きる意味であり、市民活動の根底部分だと思いました。

担当者は、宮沢賢治の詩『雨ニモマケズ』が好きです。
『銀河鉄道の夜』は、『雨ニモマケズ』と通じる世界観があって、きちんとした理解は難しいのですが、その世界観が(少なくとも私には)好ましいものと感じました。

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