みなさまの参考になりそうな書籍を担当者がピックアップして、毎月お届けするコーナーです。当センターにお寄りになったら、ぜひ手に取ってご覧ください。
今回もまだ少し遅れています。今回が8月分です。(汗)

『寺院消滅 ~失われる「地方」と「宗教」~』
鵜飼 秀徳、日経BP社、2015。
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/15/240960/

本が壁際に立てかけてある写真
<本書の帯から>
人口減に伴って衰退する寺院経営の現状を
ビジネス誌記者が徹底ルポ。

<担当者から>
今回紹介する本の著者は、『日経ビジネス』の記者で、社会、政治、経済、文化など幅広い分野の取材経験があり、また実家がお寺で、自らも僧侶の資格をもっているかたです。

昨今の人口減少に伴い、地方都市の衰退が言われていますが、本書の冒頭で指摘されているのは、寺院はすでに消滅期に入っていて、これから、かなりの数が消えてなくなるのでは、という課題提示です。

たしかに現在は、地域のつながりが希薄化していると言われます。また、お葬式の簡略化をはじめ、地域のお寺とのつながりも希薄化していることは否めません。本書の出版後に起きたコロナ禍も、影響を与えていると感じます。

本書では、かなり広い視点から、日本全国の仏教寺院の現状を取材しています。綿密な取材により、離島のお寺や、再建に苦しむ被災地域の寺院や地域の人たちの苦労、企業人たちによる立て直しの試み、はたまた尼寺が絶滅寸前になっていることなど、多くの現状が明らかにされます。

また、論点的にも、無住寺院や荒廃寺院の問題から、地域と寺院とのつながりの希薄化、廃仏毀釈や農地改革、政教分離政策などの宗教への影響、各仏教教団の調査結果など、大変多くのトピックに触れており、読み応えがあります。

ともあれ、本書を一読した後では、やはり宗教、特に寺院の今後、ひいては地域の今後が心配になります。

巻末で、作家・元外務省主任分析官の佐藤 優さん(このかたはクリスチャン)が、宗教、また仏教について、以下のように述べています。それは救いではあるかなと思います。
「消滅しそうで、消滅しない」「仏教は日本において土着化している」「人は必ず死ぬ。宗教が衰退しているのは、死に対する意識が変化しているだけ」「死の現実を広く社会が認識すれば宗教は復興する」。

ただ、現代人は、ややもすると「死のことを意識しないで(考えることを避けて)毎日を暮らそう」としているのではないでしょうか。

私自身、宗教心があるとか、信心深いわけではありません。ですが、人生をどう生きるかという問題と「死」は密接なつながりがあると思っています。「宗教」には興味を持っていますし、今後も持ち続けることで、よりよい活動、そして自分なりに充実した人生につなげたいと思います。

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